インタビュー ビットコインについて

京大・岩下教授が語る 「ビットコイン、リブラに期待される役割と暗号資産業界の将来」

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京都大学・公共政策大学院の岩下直行教授にインタビューしました。

内容は、「ビットコインやリブラなどの暗号資産が果たす役割、そして仮想通貨業界の将来について」です!!

今回の記事では、インタビューに加えて岩下教授の公開した最新論文を簡単にまとめたものも掲載して濃い内容にしました。

ビットコインの辿った変遷、そしてこれから期待される役割について理解を深めちゃいましょう!

「岩下教授って一体どういう方なの?」

「最近公開された論文の内容は?」

そう思われている方も居るかと思いますので、インタビュー内容に入る前に、岩下教授について紹介させていただきたいと思います!

岩下教授は日銀Fintechセンターの初代センター長を務め、その後京都大学・公共政策大学院の教授として活躍されています。

そして岩下教授の論文が今年の7月15日発行の一般社団法人情報処理学会が発行する論文誌デジタルプラクティス最新号Vol.10 No.3 通巻第39号に掲載されており、その題は「暗号資産への脅威と対策─ ビットコインの社会への展開による変質 ─」です。

(以下、岩下直行「暗号資産への脅威と対策─ ビットコインの社会への展開による変質 ─」より文章、画像を引用、参考)

ここで論文を紹介させていただくと、内容は大まかには、「サトシナカモトによって新しい電子現金システムとして提案されたビットコインだったが、彼が思い描いた理想からは様々な逸脱が起こり、期待された役割を果たせていないでいる」といったものです。

ここでは、サトシナカモトの理想からどのような逸脱があったのか、簡単に触れたいと思います。

論文のまとめ(暗号資産への脅威と対策)

岩下教授の論文では、以下のような逸脱が起こったとしています。

  1. 最初の逸脱:素人投資家の参入と交換業者の発展
  2. 第2の逸脱:交換業者へのサイバー攻撃
  3. 第3の逸脱:専用採掘業者の発展
  4. 第4の逸脱:アルトコインの増加と51%攻撃

それでは以下、論文のまとめとインタビューになります!

最初の逸脱:素人投資家の参入と交換業者の発展

プロジェクト開始当初のビットコインに関心を持っていたのは一部のgeekだけであり、彼らはビットコインの趣旨に賛同してマイニングを行っていました。

取引に必要な電子署名の秘密鍵は各ユーザーが安全に保管し、自らがその責任を負う構造でした。

麻薬などアンダーグラウンドな取引が多かったと言われています。

しかし、2013年になると市場は大きく変化します。

キプロス危機などによりビットコイン需要は高まり、相場は10倍に急騰。

安全に秘密鍵を管理できない素人投資家の参入により、法定通貨と暗号通貨を交換して交換した暗号通貨を預かるという役割の交換業者が一般化しました。

ここからビットコイン論文から推測されるサトシの理想の世界からの逸脱が始まったと言えるでしょう。

第2の逸脱:交換業者へのサイバー攻撃

交換業者が取り扱う金額は高額になっていき、サイバー攻撃の犠牲となりました。

ビットコインは、信頼できる中央機関を決して置かないという、「トラストレス」という考え方を持つからこそ法律や政治体制の壁を超え、国際的利用が可能になったとみられています。

これに対し、信頼できる中央機関を置く従来の仕組み「トラスト」の世界と呼び、ビットコインの市場ではトラストとトラストレスが併存する状況が続いてきたのです。

そして危なっかしい「トラストレス」の世界でビットコインは盗まれ、資金洗浄される事件が起こりました

「トラストレスの中のトラスト」構造

第3の逸脱:専用採掘業者の発展

さらに、マイニングが消費する大量の電力も無視できません。

2017年のビットコイン価格高騰の結果、莫大な資金がマイニング産業に投じられ、半導体産業のシリコン・サイクルに影響を与えるほどマイニングマシンが製造されました。

相場の加熱で、地球環境問題という形で全人類の不利益となるのです

第4の逸脱:アルトコインの増加と51%攻撃

最後の逸脱に関してですが、まず、ビットコインを模したアルトコインが大量に発行されました。

この結果、51%攻撃による被害が出始めました。基本的には膨大なハッシュ計算能力を投入してマイニングを行い,攻撃者に都合の良いチェーンの分岐(fork)を発生させてそれをチェーンの本流にしてしまうという攻撃方法です。

攻撃は非主流派の暗号資産の低いハッシュ計算能力を突いたものでした。

アルトコインのマイニングに参加するマイナーは少なく、安全性が検証されていなかったのです。

以上が、岩下教授が論文で触れている、「サトシの描いた世界からの逸脱」まとめになります。

岩下直行教授インタビュー

それでは、インタビュー内容に入っていきましょう!!

  1. ビットコインが生まれた当初抱いた印象、ビットコインが果たす役割
  2. リブラはサトシナカモトが描いた電子現金システムを実現するのか
  3. テザー発行量とBTCプライスの関係性、そして仮想通貨業界の未来

ビットコインが生まれた当初抱いた印象、ビットコインが果たす役割

ブロック博士(以下ブロック) ビットコインのプロジェクト開始当初、岩下教授はビットコインにどのような印象を抱かれましたか?

岩下氏 当初ビットコインはプライバシー保護のための決済手段としてスタートしました。私自身は2012年あたり、シルクロード事件あたりから存在を知りました。

アンダーグラウンドで取引されていて、流通していて不思議でした。だって中身空っぽなんですもの(笑)

空の箱だけが取引されていたのに、値段がつく。20ドルでも不思議でしたし、そのうち無価値になると思いました。

2013年にはイリーガルな取引に使いやすいことでニーズがあるのだなと感じましたが、いずれにせよ表には出られないだろうなと感じました。

円やドルが紙切れになってビットコインだけが生き残ることはないのではないかと。

そんな世界では、電力やインターネットなどの社会インフラや経済自体が崩壊している状態ですからね。

世界がベネズエラみたいに全体としてなる訳ではないですから。

ブロック アンダーグラウンドでない取引へ利用され、期待された役割を果たすのは難しいのでしょうか?

岩下氏 仮想通貨を安全に取引するには、秘密鍵公開鍵を生成するところから始まります。

作り出したものが鍵のある空間の中にランダムに散りばめられていなければならないのに、偏在していたりします。

これが脆弱性で、同じ公開鍵、秘密鍵を持っている人が根こそぎ金を持っていけてしまいます。

コインチェックにもセキュリティエキスパートがいましたが、それでも盗まれてしまいました。

秘密鍵が本気で複数のサイバー攻撃を受けたら守りきれません。よって素人は交換業者に預ける他ないのですね。

うまくいくかに関しては疑問でしたが、価格はどんどん上がっていきました。

値上がりはしていますが、サトシの論文から想定される理念からはやはり逸脱していますよね。

シカゴの暗黒街でウルブリヒトのような人たちが様々な違法な取引をして、それに使われることは想定していなかったのではないでしょうか。

リブラはサトシナカモトが描いた電子現金システムを実現するのか

ブロック 岩下教授はリブラの成功にネガティブですが、リブラはサトシの描いた理想の世界を実現できないとお考えでしょうか?

岩下氏 リブラはビットコインの二番煎じになると考えています。

「あなたリブラ買いますか?買うと値上がりしますよ。」となって結局値上がり期待。

リブラは今のシステムではペッグされて値段が制限されるようにはなっていないので、プライス的に安定性を欠くはずです。

その時点で、リアルな経済が乗っかっているドルや円のような信頼は確保できず、通貨としては使えないでしょう。

結局、仮想通貨ではプライスをちゃんとした株の計算のようにはできない訳です。

ハードフォークする時なんかも、本来であればビットコインの価値は失われるはずなのに、ビットコインキャッシュが生まれると得する人がいる。これは金融の世界で起こっていることとかけ離れています。

逆に、リザーブの分しか資産が変わらないというように、リブラが実体経済に縛られたものだったらそれはそれで面白くないですよね。

結局値上がりはすると思いますが、ビットコインのように脱税やマネーロンダリングに使われてしまうでしょう。

もちろんアメリカ国家がそれを許さないので、発行自体難しいでしょうが。

発行されても結局ICOプロジェクトの一つになって、そういうものは通常値上がりしてその後値下がりするので、その結果Facebookが評判を失うことも考えられますね。

セキュリティ面などの問題はFacebookが改善に努めるでしょうし、国境をまたいだ取引に特化させれば、貢献はできるかもしれません。

ただ、国境をまたいだ金銭的取引というのは、国ごとの犯罪対応が上手くいかないなどの問題を起こすので好ましいとは言えません。

そのため、実現にはオンチェーンのブロックチェーンの取引の透明化や犯罪のエンフォースメントが必要となるでしょう。また、多くの人は国境をまたいだ取引に興味がある訳ではないのでは?とも思います。

ブロック リブラが実現した場合、BTCへはどう影響するとお考えですか?

岩下氏 リブラがアンチマネロンを実現し、価格も安定したら、真っ当な人はリブラを使い、ビットコインの使用は減るはずです。

ただ、ダークなニーズが維持され、価値は下がらないかもしれません。

ビットコインマニアの多くはリバタリアンで、ヒッピー文化から続く西海岸の文化の人たち。そういった人たちが一定数いますからね。

テザー発行量とBTCプライスの関係性、そして仮想通貨業界の未来

ブロック 岩下教授はブログで、テザー発行量増加とBTC価格が一致していると見ていますよね。一部仮想通貨アナリストはTether社が、ドルで十分に担保されていないテザー(USDT)を発行し、BTC価格引き上げていると見ているが、どう思われますか?

岩下氏 Tether社がビットコインを買ってテザーを売ったのは数字でバレちゃっていますよね。

ビットコインの値段が上がればテザーの信頼が上がり、さらにビットコイン上がる。今の所このような正のフィードバックが起こっています。ただ、逆のシナリオもありうる。

面倒なのは、ドルの札は中央銀行の負債側に乗るものなのに対して、テザーって別に負債じゃない。

法的に返す義務ないから、テザー社は何も責任取らなくていい。だからそこに一ドルの価値があると信じてバイナンスとかがテザー持っているのは不思議ですよね。

ただ、これはエコシステムを支える、もたれ合いの構造を表しています。また、我々はドルでいいのでテザーを買わないが、暗号通貨交換業者はドルや円で大きな取引できないから、買うわけです。

これは金融ショックでお金が回らなくなったときに、崩壊するのではないかと。金融緩和はいつまで続くかわからないが、どこかのタイミングで崩れる局面が来ると思います。

テザーの価値がなくなったら、暗号通貨の価値が一気にぺしゃんこになってしまいます。

ブロック 岩下教授、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

まとめ

ビットコインやリブラなどの暗号資産が果たしうる役割や、暗号資産業界に来るであろう未来にについて語っていただきました!

岩下氏の7月に公開した論文「暗号資産への脅威と対策─ ビットコインの社会への展開による変質 ─」に関しても、ぜひチェックして、さらに深く理解してみてください!

この記事の監修者
執筆者: ブロック博士
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そうワシじゃよ。

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